#04.インターネットがもたらすもの

建築設計者にとって、インターネットとはかねてから気になる存在であったように思う。思いをこめて作り上げた作品をWeb サイトで発表できる等、顕示欲の強い人間にとっては魅力的な要素がそこにはある。

ただ、そこで思うのは、単なる自己満足でしかないのではないか、はたしてインターネットなるもの、どのくらい有効なのだろうか?
設計事務所として宣伝まがいの事をするのは、ふさわしくないのではないか云々、猜疑心や自制心が脳裏をかすめ、躊躇していた人が大半かもしれない。

ぼく個人もおおむね似たような心境であった。少し前には、製図板からCADなどと言うコンピューターに道具が変わり、今度はインターネットの登場である。以前のように、一生懸命建築の勉強をするだけでは、時代について行けない、つらい時代と憂慮していた。

立場的に憂慮と言えば、もっと本質のところで住環境の問題がある。街並については欧米と比較するまでもなく絶望感さえ感じる。

我々の立場で立ち向かえるのは、単体の建物でありほんの些細な事でしかないが、それとても、一戸建てならハウジングメーカー、マンションならデベロッパーの独壇場になりかねない。

大量に供給する必要のあった時代ならまだしも、いまだに生産者側の都合優先の姿勢はいかがなものか、購入者のニーズが作り出した物とはとても思えないし、不透明な価格にも疑問がある。

だが、「往く川の流れは絶えずして・・・」である購入者のライフスタイルやニーズが多様化し、ベンチャーやSOHO が脚光を浴びる。本当に能力のあるもの、ニーズに的確に答えられるものだけが企業規模に関係なく伸びる時代。いよいよ、待ち望んでいた時代が、インターネットと共に訪れている。

我々には、少なくとも住文化に対する使命感があり、入居者の立場で作る基本姿勢と能力がある。同様に、とくに看板を出さず狭い部屋で宣伝もしない、一般的には得体の知れない存在でも誠実で能力のある設計者が数多くいる。知られてないだけだ。

インターネットというメディアを利用すれば、そんな設計事務所でも、これからはもっと本来の能力を発揮できる環境になろう。

例えば、今までは呼びかけや情報の伝達に莫大な費用がかかり、ほとんど不可能に近かった、見知らぬ人同士のコーポラティブハウスもインターネットが可能にする。この事は、購入者にとっても選択の巾が広がる喜ばしい状況と言える。

まさにインターネットが可能にするであろう、「新しい住まい」の姿のひとつである。

今回、私達の提唱する「創作住居」はコーポラティブハウスを更に一歩進めたシステムである。コミュニティを前面に出した、いわゆるサークル、組合などに抵抗を感じる人も多いと思う。もっと気軽に、ドライな方法で住まいを手に入れたい。そんな人のためのオーダー型集合住宅のスタイルである。

経済の発展に伴い、衣食住も進化するが、時代、年齢において順序があるように思える。

まずは、「衣」ファッションに火がつき、次のステップが「食」グルメブームである。そして最後、成熟社会の仲間入りが「住」であろう。今の日本の位置がここだと思う。

コンランショップ、青山のイデーのにぎわいは、10年前ではまだ無理だったろう。当初の渋谷パルコパートIIの企画、ねらいは早すぎたのかもしれない。

「創作住居」は時代が作り出したシステムである。時代に取り残された感のあった「住宅のビッグバン」がここにあった。

「住」の時代とインターネットの到来が重なるとは、とてもラッキーなめぐり合わせである。賛同する者などが増え、ポリシーやスタイルのある質の高い「建築」が多く実現して欲しいものだ。地道な活動を通じて、日本の住環境、ひいては都市環境が改善されることを願う。

代表取締役 伊藤 正

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