フルオーダーのキッチン

竣工して5年が経ちますが、入居者どうしのコミュニティはいかがですか?

 
普段からよく顔を合わせます。4世帯と⼩規模ということもあり、つかず離れずのほどよい距離感を保つことができていますね。⽣協を⼀緒にとったり、学校についての情報を教えてもらったり。⼦供の出産で⼤変だった時に、上の⼦供を預かってもらったこともあり、とても助かりました。
 

内装について、こだわった点はどこですか?


時間が経つにつれて劣化するのではなく味わいが出る住まい。その点はものすごくこだわりました。⽇本の住宅は外国と違って、築年数が経つとほぼ価値がなくなってしまいますよね。こうした流れに抗うわけではないですが、趣味が共鳴しさえすれば客観的な資産価値は下がらないようにしたかったんです。実際、時間が経っても⾊褪せず価値を持ち続ける住まいになったと思っています。

味わいが出るものの好例が、ドライエリアにつながる床タイル。年数が経って踏みしめると⽬地のモルタルにヒビも⼊るだろうけれど、それも含めてかっこよくなればと思います。⽬地を広めにしてモルタルの素材感を表現しました。キッチンのカウンターもわざと表⾯を粗く仕上げています。「どこまでラフさを表現できるか、ちょうど良いところでストップって⾔ってください」なんて⾔われながらつくりました。
 

キッチンはフルオーダーで、⽕⼒にこだわったコンロが備えられています。


業務⽤コンロなのですが、これはすごく良いです。もうコンロはこれ以外使えません。普通の⽕⼒のコンロを使うと、物⾜りないと思ってしまうくらいです。夫婦とも実家が飲⾷店で、設備が⽐較的整った環境で育ったこともあってキッチンにはこだわりたいと思っていました。
 

キッチンを「このように楽しく使っている」といったエピソードはありますか?


カフェを経営しているのですが、そこで出す商品の試作で、オーブンなどが⼤活躍しています。またそれ以外でも、お菓⼦をつくって振る舞ったりと、楽しみながら使っています。こだわって良かったです。

使い方を決めない土間空間


 

 

 

1階は、⽞関と連続する⼟間空間が特徴的です。


最初はある程度使い⽅を想定していましたが、今はあまりその通りに使っておらず、また限定もしていません。⾃転⾞を置いたり、いただいた絵を飾ったり。カフェを始める前に縁があってエスプレッソマシンを買ったのですが、お店の⼤部分を陣取るくらいの⼤きさのマシンを、当時はここに置いてエスプレッソを淹れる練習をしました。

1階に限らず、余⽩が結構あるんです。⼀⾒、何に使うの?っていう。螺旋階段下とか、リビングの本棚の前の⼀段⾼くなっている部分とか。ここでは⼦供も遊ぶし、この⼀段⾼くなっている部分をステージにしてバイオリンの練習をしたり。いまは「何をするための部屋」というように無理に決めなくても良いと思っています。住まい⼿によっていろいろな使い⽅が考えられるから、「どうやって使おうか」と想像するのも⾯⽩いですよね。
 

地下住⼾での暮らしはいかがですか?


良いですよ。不安もありましたが、結果、⼼配ありませんでした。別のコーポラティブハウスの地下住⼾に住まれている知⼈から、何の問題もないと聞いていたのも安⼼材料でした。夏は涼しくて冬はあたたかい。地震でも揺れません。湿度に関しても、あまり地上階と変らないというのが実際の感覚です。まったく問題ないですね。
 

プロジェクト進⾏中楽しかったこと、苦労したことはありますか?


仕上げ材の⼀つ⼀つを、様々な選択肢の中から選ぶことができたのが楽しかったです。例えばリビングのフローリングはチーク材で、⽩い塗装をふき取っています。⼀般的な選択肢には出てこないですよね。選んだ結果はすごく良い。裸⾜での歩き⼼地が抜群。これを⼀⽣知らなかったかもしれないと思うと、知ることができてラッキーだと思いました。

⼀⽅で、選択肢が無限にあるようなものなので、それを苦労と⾔うのであれば、苦労したのかもしれません。決定権が⾃分にあるというのは責任重⼤です。ただ実際はそれが楽しくもありました。
 

コーポラティブハウスを検討されている⽅に、オススメをお聞かせください。


住むことを真⾯⽬に考えて住まいづくりに活かすチャンスは⼈⽣に何回もありませんが、新築の集合住宅という枠の中でそれができるのはコーポラティブハウスだけだと思っています。さらに、どこにどれくらい払うのかが⽬に⾒える。無駄だと思うものにコストをかけずに済む。それがコーポラティブハウスの良いところだと思います。打合せを重ねてつくっていく。その時間は⻑かったのですが、私はこの時間も資産だと思っています。その時間を味わえるのは、コーポラティブハウスだけではないでしょうか。

Nさんはあまり最初に想定していた使い⽅にこだわらず、柔軟に、そして⾃由に住まいを使いこなしていました。普段は何でもないリビングの⼀⾓が、お⼦さんのバイオリン演奏の簡易ステージに変わるというのも⾯⽩いですね。⽬的を限定せず、様々な使い⽅ができる余地を残しておくことが、暮らしのゆとりにつながるのだと感じました。ひとつひとつにこだわり、時間が経ってからのことを考えて、何度も打合せを重ねて選んだ素材の数々。成⻑する住まい、楽しみです。