#10.tradica トラディカ(武蔵野市吉祥寺)


土地所有者の方から土地の有効活用、相続対策、売却用地などついて、ご相談を受けた際に、敷地の1区画をコーポラ用地として提供して頂く事になり実現した例。

この計画は大きな土地を持つ所有者の方から、先祖より受け継いできたこの土地を、大切にしてくれる人に住んでもらいたいと言う要望に対して、コーポラティブハウスを提案することで実現をした計画です。
 
相続対策で敷地全体を維持継承することが困難になり、やむを得ず大半を手放さざるを得なくなってしまった土地所有者の方ですが、土地がさらに細分化されていくことに強く抵抗があったようです。敷地の一角に自宅を残す心積もりの土地所有者にとって、かつての自宅の一角でミニ戸建て開発が行われたり、賃貸や分譲マンションになること対して、否定的な考えを持っておられました。
 
とは言っても、大きな敷地に大きな一軒家を構えて、ずっと住み続けることの難しさを実感している土地所有者にとって、大きな戸建てを期待するも、可能性の低さと将来に対しては不安があるようでした。
 
そうした中、正にコーポラ住宅というスタイルは土地所有者にとって、思い描いていた理想の姿に近いものだったようです。住まいに対する思いの深さもあり、住まい手の顔が見えかつ将来すぐに再開発されるリスクも少なく、まとまった空地や緑などが末永く継承されるであろう住まいの形、漠然と追い求めていた思いを一気に解決してくれるのが、コーポラティブハウスだったのです。
 
この計画は、住まい手だけではなく、土地所有者の方の夢をも背負った計画だったのです。
 
実はこの計画は最初、土地所有者の方は私共も含め、何社かのコーディネート会社へ連絡を取られたようです。
 
すぐにアプローチしたのは私共ではない二社でした。そのうちの一社であった㈱タウン・クリエイションから共通の知人を通して、設計の打診を受け、共同パートナーとして一緒に土地所有者のところへ出向いたところ、意気投合するような形で一気に話がまとまりました。
 
ゼロワンオフィスとしては、初めての他社とのコラボレートでしたが、それぞれが単独で動くより、今回の様にチームを組むことで土地所有者からのより強い信頼を得られたと聞いています。このことから弱小、零細規模の会社にとって、今後も各社の強みを生かしたコラボレートと言う選択肢は有効だと感じました。
 
さて、具体的な設計ですが、時代を経た庭木も多く、もはや個人の所有と言うよりは地域のシンボルにもなっている松の大木を、まずは保存しようと初めて敷地を見た時に決めていました。松のほか、梅や楓など残せる樹木は残す配置計画をし、さらに外構計画において、武蔵野の面影を感じることが出来る里庭のように自然な緑を育てる環境をつくることを目指し、建築的にも壁面緑化や屋上緑化に努めるなど、多くの緑に囲まれたコーポラティブハウスをテーマに計画をしました。

tradicaは11世帯のコーポラティブハウスです。法的には共同住宅も可能な敷地でしたが、あえて長屋で計画をしました。効率よく共同階段などをつくるより、里庭を歩きながら自宅へ向かうほうが、イメージに近かった上、東京都安全条例による窓先空地などを設けるより、長屋で計画したほうが床面積も取れたからです。
 
既存の緑を守り、新たに緑を育てる環境をつくると共に配慮したのは、住宅街の中のスケール感、建物のボリュームを小さく見せることでした。本当は分棟形式にしてボリュームを小分けに出来ればよかったのですが、敷地面積的に無理であったので、東西30mあるボリュームを、戸堺壁を大きく跳ねださせたり、3階をセットバックさせるデザインとして、視覚的に建物を分断させ、大きな壁面をなくすデザインにしました。

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代表取締役 伊藤 正