#02.プロジェクトの立上げ(土地所得について 2)
コーポラティブハウスに路地上敷地でのテラスハウス方式のものが多いのは、まさに土地価格による。
戸建て住宅には広すぎて、かつ、小割にも出来ない。建築基準法上の共同住宅が建てられないこのような土地はデベロッパーも手間ばかりかかるので手を出さない。ほとんど競争相手がいないため、破格の土地価格になることがあるのだ。
ゼロワンオフィスの場合、先日竣工した三茶ハウスや今進行中の弦巻プロジェクトが当てはまる。設計者としては共用部の創り込みをしにくいことや、外観の全貌が道路から見えにくいなどデメリットもあるが、こじんまりと建築的には面白いものを作りやすいメリットがある。
入居者にとって好き嫌いはあろうが、設計の自由度が高く、費用対効果の点では群を抜いたメリットを享受できると考えている。
ゼロワンオフィスの場合は吹き抜けや階段を持つ立体空間に加え、平面の広がりを持ったフラット住戸を組み合わせるパターンを主力にしている。特に最上階はペントハウスタイプとして他ではまずつくれない広々とした住戸を提供している。テラスハウス方式でも設計次第でいかようにでもできる。
絞られた土地情報の中で、残った候補地についてはすぐさま検討に入る。建築法令関係の整理とチェック、周辺相場と環境のチェック、役所へのヒアリングに続いて早速、ボリュームスタディと呼ばれる基本設計のスタディに入る。
同じような土地に見えても周辺の環境や方位などで実にさまざまな設計となる。設計コンセプトを明確に出せるか、居住性は確保できるか?さまざまなチェックの後、振り落とされる物件も多い。
ここでの決断の決定権は単純に設計者としてやりたいか、やりたくないかによる(笑)。
土地のもつ魅力だけはだめで、どちらかと言うと建物の持つ魅力が上手く引き出せるかどうかが最終的なGOサインとなる。ここが設計事務所たる所以の愚かなところでもあり、こだわりたいところでもある。不動産的に言えば信じられないことは重々知ってのことである。
もちろんプロジェクトは入居する人たちのものである。が、同時に私たちの作品でもあると考えている。やるからには誇りと自信、愛着を持って進めたい。そんな気持ちを大切にしていくと、基本設計の出来がとても大切なのだ。単に人が集まればよいと言うスタンスには、まだまだなりきれない。
代表取締役 伊藤 正