#10.ラドンについて


本~地下室のラドンは本当に心配?~
 
地下室のラドンの影響は?
 
今、地下室において天然放射性物質ラドンの影響が大きいとの心配の声も聞かれるが、実態はどうなのか調べてみた。
 
人体に与える影響として、血中の中性脂肪やコレステロールの代謝を促すなどのプラス面もあることは、ラドン温泉等の効能からも想像される。
 
一方で発ガン性が多少なりともあるのではないかという疑問は、ラドンが欧米においても自然放射能負荷の原因にもなっているため否定はできない。
 
とはいっても発ガン性に対して神経質になってみれば、化学系床材(塩ビ系)や防虫処理、接着剤(フォルムアルデヒド等)、ポリ塩ビ系壁仕上げから検出される室内汚染の影響、ダイオキシンやフロンの発生等々と比較してみれば、自然界から受ける自然放射性物質というのは人体にとって微々たるものと考えられる。
 
空気滞留が他の階に比べ大きい地下居室に大切なことは、室内換気と壁の遮蔽性への配慮であることは間違いない。今回の創作住居に関して言えば、地下階の耐圧盤に35cmものコンクリート床をはっているため、放射線の遮蔽に有効に働くと考えられる。
 
以下参考までに、言葉の意味として、資料を掲載した。
 
 
 
【自然放射熱:natural radiation】
地殻や建物には各種の天然の放射性物質が含まれている。人体にもカリウム40といった天然の放射性核種が含まれている。また地球の外からは、たえず宇宙線と呼ばれる放射線が飛び込んでくる。こうした自然の放射線は避けることができない。関西の花こう岩の多い地域と、天然放射能の含有量の少ない関東ローム層の地域とでは、自然放射線の強さが異なる。また宇宙線の強さも緯度によって変わり、上空に上ると強くなる。日本人は年間平均約0.4~0.45ミリグレイ(※1)の放射線を浴びている。また宇宙線からは年間約0.3ミリグレイ、体内の放射性物質からは年間約0.2ミリグレイを浴びている。自然放射線は合計約1ミリグレイになる。
 
※1:グレイ(Gy/gray):電離放射線を照射された物体が単位質量当たりに受け取るエネルギー(吸収線量など)をあらわすSI(国際単位系)単位で、ジュール(※2)毎キログラムに相当する。
※2:ジュール:SIのエネルギー単位。1kgの物体に1m毎秒毎秒の加速度を生じさせる力(およそ100gに相当する)を加えながら、1m移動させた際の仕事に当たる)グレイ単位で表される量には吸収線量のほか様々なものがある。
 

【ラドン濃度:radon concentration】
閉めきった屋内では、壁や床から天然放射性物質であるラドン(気体)がしみ出し、屋外よりも高濃度になることがある。特にコンクリートの打ち放しで換気が行われていない建物内で著しいが、日本の木造家屋内でも、全国平均で屋外の約2倍、空気1m3当たり10ベクレル(※3)程度である。
※3:ベクレル(Bq/becquerel):SIの放射能の単位。放射能は、物質が自発的に放射する放射線の単位当たりの数で表され、ベクレルは毎秒の数である。ベクレル単位で表される量は、核種の壊変の活性度であり、放射線のエネルギーや危険度とは比例しない。【参考:「知恵蔵1999」】
 

 
ラドンはウランの崩壊過程で発生する希少ガスで、ドイツでは自然放射能負荷の約50%の原因になっている。ラドン自体は人間にとって、崩壊過程で発生する放射性重金属に比べ、それ程危険ではない。一般的にラドンの発生源と侵入源は次の通りとされている。
・地下室の外壁隙間から侵入
・地上階の床材の隙間から侵入
・土壌から発生
・水、ガスからの発生
・建材からの発生

科学技術庁の放射線医学研究所の調査によれば、大阪、奈良、広島周辺に花こう岩質の地層が多いため、その周辺のラドンは1m3当たりの全国平均を上回っているといわれる(1986年から放医研が全国の一般家庭7600軒を調査した結果では、全国平均ラドン濃度は1m3当たり39ベクレルだった)。欧米においても、1960年代の中ごろまでに建設された戸建てや集合住宅では、問題が発生しやすい。
 
この時期までの地下室は一般には床下には充分遮蔽せれておらず、ラドンが入り込みやすくなっている。地下室が最も影響を受けやすく、1~2階の居室部分は影響が少ない。最近の建物は、厚い基礎の上に建っているので、ラドンは侵入せず、一般的に問題とならない。さらに大都市では今のところ異常なラドン値は検出されていない。
 
防御策としては、居室なら3時間から4時間おきの短い換気が必要。地下室では、電気やガス管、水道配管と壁との間の小さい亀裂や穴をコーキングして塞ぐ必要があり、ドアの密閉性や壁の遮蔽性をチェックする必要もある。
 
換気扇を設置したり、基礎に排気システムや小さな空気設備を取り付けることでラドンを除去することもできる。建材においては、石・粘土系のものに放射能濃度の高いものがある。
 
たとえば燐酸石膏ボード(燐酸石膏の混合比が50%以上のボード)である。原材料としては燐鉱石やジルコニア(バデライト)、ジルコンフラワー、ジルコンサンド(以上の原材料は建築分野では軽量コンクリートの化粧層等に使用)の濃度が非常に高い。
 
代表取締役 伊藤 正