#08.常識とは?土地の価値基準が変わる(2)
~南道路や角地がそんなに有利?道路の持つ大切な意味~
前回、土地に対する常識について、査定方法や建築基準法が変われば、まったく逆になってしまう例もあることを述べさせていただいた。今回もその土地に対する価値観の矛盾ついてお話したいと思う。
たとえば、南道路は不動産広告で売り文句の一つになっている。角地も同様に売り文句であるし、固定資産税の算出などの査定でも割増である。
◆ 南道路について
前回は専門的な話はわからない!とお叱りを受けたので今回は一言にします。
現在の都内及び近郊では住居系地域にはまず、日影規制と高度規制がかかっている。これは北側の人の日照を守る目的で作られた法律である。
この規制により、敷地内でも北側部分は大抵この規制の影響を受けてしまう。それが、北側道路では道路がある分、規制の影響が少ないメリットがある。南道路ではこの影響をまともに受けて、北側に中途半端な庭にもならない空地を取らざるを得ない事が多くなるのだ。
だから、限られた土地を有効に使うのには北道路の方が有利である。
◆ 角地について
建ぺい率と呼ばれる、敷地に対しての屋根面積は10%大きく建てられる緩和もありますが、今度は道路斜線といった規制がネックになってくる。
道路斜線とは、道路巾に対して建物を建てても良い範囲を規制している法律で、道路巾の広い方が沢山建てられるようになっているものである。
角地という事は、2方向から規制がかかってくるため、ケースによっては不利になることもある訳だ。この規制には方位は関係ない。又、4mに満たない巾の道路の場合は、道路中心線から2mの範囲までは道路提供しなければならない。
しかも、無償で、だ。買うときはその無償提供しなければならない土地も購入しなければいけない、と言ったおかしな状況もあるのだ。高い建物を建てる場合や、片方の道路が狭い場合などは特に注意が必要である。
◆ 容積率について
床面積の事で、容積率200%であれば敷地面積の2倍までの床面積が建てられると言う意味である。だから、容積率の高い土地は一般的に価格も高い土地と言える。
住宅情報や不動産広告にある容積率はその地域に定められた容積率が書いてある。ここでの落とし穴は前面道路だ。
容積率は地域ごとに都市計画で決められているが、その土地に対しては更に、前面道路巾によっても変わる。
用途地域が住居系地域の場合は道路巾×0.4.その他は道路巾×0.6となる。
たとえば、広告で住居地域:容積率200%とあっても、道路が4m(もしくは以下)の場合は4×0.4=1.6(160%)となってしまう。4m以下であれば、先ほど書いた道路提供分を差し引いた面積が基準になる。
同じ土地は二つとないのに、一律にこれが有利などと言うのはあり得ないはずだ。
たとえ同じ形状、面積であっても道路との接し方、方位によって大きく建築条件は異なってくる。特に道路が非常に重要だという事は分かっていただけただろうか。
おかしなことに、今までの土地の価格は、その事があまり考慮されていない。建築的専門知識がない人たちが、専門家の意見も聞かないでつけられているのが、今までの土地の値段だという事を知っておいても損はないと思う。
この他、先ほどの日影規制、道路斜線など総合的に見なければ、本当の土地の値段などつけようがないのだ。今までは、周辺相場による資産価値だけで見ていたので、実際建物が建つかなんてあまり関係なかったのだ。
そんな、いいかげんな!と思われるかもしれないが、税務署も銀行も不動産業界もそれで良かったのだ。
それが、これから今までのようにいい加減な(?)ものから、収益還元方式と言った一応理屈の通った鑑定に移行されれば、土地の値段も常識も大きく変わらざるをえなくなり、ひどいところは暴落せざるを得ないのがこれからの状況なのだ。
また、土地も例外ではなく価格は需給のバランスにもよる。企業がキャッシュフローによる会計基準に移行して、リストラによる社宅などの売却が進んだり、将来の人口の推移なども考慮すると、土地価格の将来は二極化が進みながら全体としては下落するものと思われる。すべきだ。して欲しいと願う。
代表取締役 伊藤 正